天然なあたしは悪MANに恋をする
あたしが話していない…あたしの生活を先輩は知っている

どうしてなのかな?

学校で、親が離婚していない…とか噂で流れているのかな?

「明日の朝、ピアスをあけるか。俺のピアスをあげるから」

先輩がぎゅうっと抱きしめながら、あたしの左の耳たぶを触った

「え?」

「俺は、昨日初めて瑞那と話をしたばっかだ。幼馴染の菅原と比べても仕方ないけど…さ。なんか嫌なんだよな。あいつは瑞那のことをよく知ってるわけだろ? あいつが知らない瑞那を、俺が知っているってところを見せつけてやりたい」

先輩の声が、あたしの耳元で囁いた

「我儘な言い分だけどさ」

自嘲気味な言い方で、先輩が言葉を吐いた

「嬉しいです。そんな風に思ってもらえてるって、今まで無かったから」

あたしは先輩の背中に手を置いた

温かいね

人の体温ってどうしてこう…気持ちが良いのだろう

幸せな気分になれる

ふと…この腕が…胸が、声がレンだったらどんなに良いのだろう、なんて考えてしまうあたしは、贅沢な女だ

レンを諦めるって何度心に言い聞かせたら、あたしの心は忘れてくれるのだろう

先輩のパジャマにしがみつくと、ぎゅっと唇を噛みしめた

先輩は、あたしの前髪にチュッとキスをしてくれた

何度も『大丈夫』と囁く先輩の擦れた声を聞きながら、あたしは重たくなってきた瞼を閉じた

このまま朝になったら、レンへの気持ちだけが、あたしの気持ちからほっかりと無くなってないかな?

そうだったら、どんなに気が楽になるんだろうね

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