天然なあたしは悪MANに恋をする

「妃木、はよー」
「妃木さん、おはよう」

学校に到着して、先輩と別れるなり、今まで口も聞いたことのない人たちから、次々と挨拶をされた

廊下ですれ違う人たちが、みんな、あたしに声をかけていく

なんか変な感じだ

今まで、廊下を歩いていても誰も声をかけるなんてしてこなかったのに

どうして？

「えへへ…ミズナ、おはよう」

セイちゃんがあたしの肩を叩いて、声をかけてくれる

「あ、おはよう」

「うわっ。本当だぁ。立宮先輩と同じピアスをしてるぅ」

セイちゃんがあたしの左耳についてるピアスを見るなり、甲高い悲鳴をあげた

「あ…これは、先輩に借りただけで」

今日の放課後に新しいのを買いに行く予定なんだけど…

あたしの説明も聞かずにセイちゃんは一人で興奮している

困ったな

あたしは首を傾げていると、廊下の向こうからレンが無表情で歩いてきた

あれ？

レン、目の下にクマができてる？

若干、眼球が赤い感じがするんだけど……

あたしの前で、レンが足を止めると、黒い瞳があたしの耳にいった

ぴくっと眉が動いてから、「ちっ」と舌打ちをした

「来んのが、おせえーんだよ」

レンが低い声で怒る

「ごめっ…」

あたしは下を向いて、手に持っている鞄をぎゅっと握りしめた

「ちょっと、ミズナに失礼な言い方をしないで」

セイちゃんが、キッとレンを睨みつけて、口を開いた

え？　なんで？

どうしてセイちゃんが怒るの？