天然なあたしは悪MANに恋をする
「ああ?」

レンが不機嫌そうに声を出しながら、セイちゃんを睨んだ

「ミズナは、立宮先輩の彼女なのよ。気安く声をかけられる女じゃないんだから」

「んだよ、それ。馬鹿じゃねえの。登校するのが遅いヤツに、遅いって言って何が悪いんだよ。意味がわからねえこと言ってんじゃねえよ」

レンが一歩前に出てあたしに近づこうとすると、セイちゃんがレンの行く手を阻んだ

「わからない男ね。立宮先輩は…」

「ああ、うぜえなあ」

セイちゃんを邪魔そうに睨んでから、レンが黒い表紙の日誌をあたしの頭の上にコツンと叩きながら乗せた

「日直、忘れてんじゃねえよ」

あ…そっか

今日から三日間レンと日直だった

すっかり忘れてた

あたしは頭の上に乗った日誌を手に取ると、中を確認した

レンはポケットに手を突っ込むと、廊下をスタスタと歩き始めた

あたしはゆっくりと振り返ると、離れていくレンの大きな背中を見つめた

栗色の髪が、開いている窓から入ってくるさわやかな風でさらりとなびく

ズルいな…レンは

ただ歩いているだけでも、あたしの視線を奪うんだから

せっかく諦められるかもしれないって思ったピアスなのに、全然効力がないってわかっちゃった

ピアスをあけたときの耳の痛みより、今あたしの胸を刺激する痛みのほうがもっとずっと痛い

痛くて、すごく苦しいよ

どうして、レンはこっちを見てくれないの?

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