天然なあたしは悪MANに恋をする
「…でさ、俺も頭にきちゃったもんだから、殴っちまってよ…」

あたしの教室で、立宮先輩が男子たちと楽しそうに会話をしている

あたしは立宮先輩に肩を抱かれて、椅子に座りながらも、机に向かっているレンを横目でちらちらと確認していた

放課後の1年F組の教室は、立宮先輩の話を聞く男女で人だかりができている

立宮先輩はあたしの横で椅子に座り、足を机に乗せて、饒舌に青族のチョーを打ち負かしたときの話をしていた

窓際の席に座っているレンは、むすっとした表情をしつつも怒りもせず、淡々と手を動かしている

あたしが書くべき日直の日誌を、文句も言わずに、黙って書いていた

「うわっ、もうこんな時間じゃん。瑞那、帰ろうぜ」

席を立った先輩が、あたしの腕をぐいっと引っ張った

「え? でも…あたし、日直だし」

「はあ? 気にすんなって。何のために日直が二人なのか知ってるか? 一人がサボっても、もう一人が真面目にやりゃあいいんだよ。なっ、菅原っ!」

日誌を書いているレンに、立宮先輩が声をかけた

レンは鋭い視線を、立宮先輩に向けた

「あとはお前に任せときゃあ、いいんだろ?」

黙ってままでいるレンに、立宮先輩がにやりと笑う

レンはふんと鼻を鳴らすと、勝気な目で口を緩めた

「いいじゃん、な? 立宮先輩が言ってるんだし、妃木がいなくても菅原なら一人でできるだろ?」

クラスの男子がレンに、声をかけた

ほかの人たちも「そうそう」と頷き合う

どういうこと?

なんで、クラスのみんなが結託して、レンを責めているの?

だっていけないのはあたしと先輩だよ?

日直の仕事をサボって帰ろうとしているあたしたちが、責められるべきなんじゃないの?

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