天然なあたしは悪MANに恋をする
「あ…でも、日直なのは…」

あたしは慌てて口を開くが、考えが纏まっていなくて、ロクな言葉が出てこなかった

「んだよ、その目は。先輩に失礼だろ」

一人の男子が、レンの前に立つと、レンの髪を鷲掴みにした

「ちょ…」

やめてよっ

あたしはレンに駆け寄ろうと足を出すが、立宮先輩に腕を掴まれて引きとめられた

立宮先輩は、嬉しそうに前を向いて、レンを見つめていた

「ああ? なんとか言えよ」

レンは髪を掴んでいる男を見て、にやっと笑うだけだった

「はあ? 何、笑ってるんだよ」

男はレンの態度が気に入らなかったのだろう

拳を振り上げた

ちょっと…レンが殴られちゃう!

あたしは立宮先輩の腕から逃れようともがくが、まったくびくともしなかった

男の拳が落ちて行くのを目にしたあたしは瞼を閉じた

レン、まだ顔に痣が残ってるのに…

ゴツっという鈍い音が聞こえてた

あたしの背後から、ざわめきが起きて、あたしはそっと瞼を持ち上げた

レンは澄ました顔で立っている

床に伏せているのは、レンの髪を持ったほうの男子だった

もしかして、レンが殴ったの?

あの鈍い音は、レンが男子を殴ったから?

信じられない光景に、あたしは目を大きく開いたまま、身体が固まった

レンの視線が動く

あたしの顔を見ると、ふっと微笑んで手を差し出した

「ミズ、来い」

「あ…」

あたしはレンのまっすぐな目に吸い込まれるように足が前に出た

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