天然なあたしは悪MANに恋をする
「レン、本当に平気?」

「だから、何がだよっ」

レンが眉間に皺を寄せて、苛々しながら口を開く

「だって…レンの私物がこんなになっちゃって。あたしのせいで…」

「何度言えばわかる。こうなったのは、ミズのせいじゃねえ。俺は、日誌を書いているとき、立宮の言いなりになって、日直の仕事を一人でやることだってできたし、立宮に言われる前に、さっさと日誌を書いて、帰ることだってできた。日直の仕事をサボって、帰るという選択肢だってあった。その数ある選択から、俺はミズに日直の仕事をさせるのを選んだ。それだけだ。ここに俺の私物が散らばっているのは、俺のせいでもミズのせいでもねえ。立宮のせいだ。あいつが、命令したからだろ」

レンはあたしの鞄も手に持つと、あたしの手を握って歩き始めた

教室を出て、廊下を歩く

廊下の向こうから、立宮先生が歩いてきた

レンの前で、立宮先生が足を止めると、頭を下げるてきた

え? どうして先生が、お辞儀をしているの?

「弟が、迷惑をかけたようだ」

「別に」

「その顔の怪我も、弟のせいなのだろ?」

「さあ」

レンが知らんぷりをして、肩を持ち上げた

「君は秘密主義者だね。何でもかんでも胸にため込んで、辛くないのか?」

「話して何かが変わるなら、話しますよ? 俺が全てを話せば、先生が立宮の乱暴な行いを止めてくれるんですか?」

立宮先生がふっと口を緩めると、首を横に振った

「残念だが、俺が言って聞くような子じゃない」

「なら、言っても仕方ないでしょ」

「そうだな。君の力になれれば…と思っただけだ」

「そのお気持ちだけで十分です」

レンは立宮先生に軽く頭をさげると再び足を動かした

「ねえ、レン…何の話をしていたの?」

「プライベートな問題だ」

「何よ、それ」

レンはにっと笑うと、すぐに無表情になって前を向いた

ほんとに、レンは秘密主義者だ

何も言ってくれない
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