天然なあたしは悪MANに恋をする
「シャワー、サンキュ。んで、渡そうと思ってたのがあったんだけど、すっかり忘れてたから、忘れないうちに…」

あたしは部屋に戻ってきたレンの姿を見て、目を丸くした

タオル一枚を腰に巻いた状態で、レンが入ってきたのだ

髪も濡れて、首も肩にもまだ水滴がついていた

「レ…レン?」

「なに?」

「いや…その格好」

「あ? ああ、着替え、鞄の中に入れっぱで持ってくのを忘れたから。んで、渡したい物ってのは…」

え? それだけ?

なんか、驚くとか

恥ずかしそうにするとか…ないの?

あたしばっかりドキドキしちゃって、馬鹿みたいじゃない

裸同然の格好で、レンが鞄の中をがさこそと漁る

あたしは目のやり場に困りながらも、レンの身体をチラチラと横目で見た

身体にはいくつかの痣がある

顔の痣と同じような色合いだから、同じに怪我をしたものだろう

見えていないところまで、レンって怪我をしてたんだ

普通にしてたから、全然わからなかったけど、きっと痛かったんだろうな

「あった…これ。バイトの帰りに買ったんだ」

レンがそう言って、小さな白い紙袋を机の上にぽんっと置いた

「え?」

「ああ、安もんだからって怒るなよ。立宮たちに財布の金まで抜き取られてたから、今日、バイトに行ったときに前借して買ったんだ。だから、ほんとに安モンで申し訳ないけど」

「あ、ありがと」

あたしは紙袋のテープを外すと、中身を出した

「ピアス?」

「ああ。それ立宮の私物だろ。開けちまった穴を塞げとまでは言わねえけど…立宮から貰ったもんをつけられるのは気分が悪ぃから」

レンが濡れている髪をガシガシと掻き毟った
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