天然なあたしは悪MANに恋をする

あたしはレンの頭にかかっているタオルを見つめた

なんで言ってくれないのだろう

他人に言えないようなバイトをしているの？

それともあたしだから言いたくないとか？

あの『優香』って人なら、レンのバイトを知っているのだろうか？

「…ったく。そんな顔をするな。一昨日のツナギを見ただろ。あれだ、あれ。そっから想像しろ」

タオルを首にかけたレンが、ツナギをジェスチャーしながら口を開いた

「工事現場…だっけ？」

「あ…うん、まあ。そんなとこだ」

「ならなんで、開店準備とか必要なの？」

「あ？」

レンの表情が固まった

瞼を何度も、開けたり閉じたりしたあと、あたしから視線をそらして、天井を見上げた

「もう一つのバイトのほうが、開店準備が必要な店だ」

「二つもやってるの？」

「ああ、まあな」

「…なんか、嘘ついてない？」

「ああ？」

レンが立ち上がると、頬の筋肉が痙攣した

「お…怒らないでよ」

「怒ってねえーよ」

「じゃあ、苛々しないでよ」

「苛々してねえっつうの…てか、バイトの話はもういいだろ」

レンがぷいっとそっぽを向いた

「だって…レンのこと知りたいんだもん。ずっと二人で、話すのってなかったから」

「まあ、そうだな」

レンがこめかみを指先でポリポリと掻いた

「そ、それに『優香』さんって人のことも…気になるっていうか」

あたしは急に言いづらくなって、小声でつぶやいた

「優香？　ああ、そっか。車で送ってもらったときにミズは会ってるのか」

「あ、うん」

あたしはコクンと頷いた