天然なあたしは悪MANに恋をする
学校の最寄り駅で降りて、改札を出た

まだ朝も早いせいか、制服を着て登校している生徒たちの姿が見られなかった

あ、でも一人…あたしのはるか前を歩く髪の長い女子が、同じ制服を着ていた

こんな朝早くに登校なんて、朝礼の時間まで何をしているんだろう

それとも先生と密会とか?…まさかね

きっと朝、早く学校に行って、勉強したりしているのかな?

あ、部活の朝練かも

そんなことを考えながら、あたしは学校への道のりを歩いた

「ちゃんと来たんだ」

背後から声がして、あたしは振り返った

「先輩」

先輩の手が伸びてあたしの耳たぶを触った

「へえ~、まだつけてたんだ。俺のピアス」

ニヤッと先輩の口元が緩んだ

「じゃあ、まだ俺の女ってこと?」

先輩の視線が、エメラルドのピアスから、あたしの目に移動した

「菅原とウマくいったんじゃないんだ」

「ウマく?」

あたしは首を傾げると、目の前にいる先輩の顔が酷く歪んだ

「うっ」と苦しそうな声を出しながら、後頭部を押さえて膝から地面に落ちて行った

え? 何? どうしたの?

「先輩?」

あたしは倒れていく先輩の腕をつかもうとするが、うまく掴めずに先輩は地面にひれ伏した

「え? ちょ…」

「よう! あんた、こいつの彼女なんだろ?」

先輩の後ろに立っていた男が、バッドをあたしにちらつかせながら声をかけてきた

「え? あの…アナタは」

「ちょっと来いよ」

青いツナギを着た大男にあたしは腕をぐいっと掴まれた

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