天然なあたしは悪MANに恋をする
『瑞那が傷ついた顔をすることはねえんだよ。あいつらが悪いんだ。瑞那は笑ってろ』

立宮先輩の言葉を思い出すと、目頭が熱くなった

温かい言葉をかけて貰うなんて、滅多にないから

言われたときは、すごく嬉しかった

お兄さんの補習に遅れてまで、追いかけて言ってくれるだけの価値ある人間では、あたしはないけれど…心の奥が温かくなった

あたしはシャツにパーカーを羽織り、サブリナパンツに着替えると、ベッドに座った

鞄の中に入っている歪な形のお菓子の箱を取り出す

ポッキー、無駄になっちゃったなあ

あたしは振り返って、窓を見つめた

あたしの部屋の窓から見える隣の家は…レンの家だ

窓を開けて、手を伸ばせばレンの部屋の窓に触れられるのに

すごく遠く感じる

家は隣にあるのに…手を伸ばせば、触れる位置にレンの部屋があるのに

心が遠いよ

遠すぎて、近くにいるのに、温もりが感じられないよ

あたしは窓から視線を外すと、ベッドから立ちあがった

今日は、レンのお母さんがお鍋だって言ってた

みんなで仲良く食べたいよ

気持ちを切り替えなくちゃね

あたしは、両親が離婚してから、ずっとレンのお母さんにお世話になりっ放しだ

二人とも、子供の親権を譲り合った

あたしがいらないみたいで…コブつきの生活なんて嫌だって堂々と言われちゃった

だからこの家と、あたしが独り立ちするまでの生活費の面倒を見てくれるなら、あたしは一人で生きていくと言ったの

あたしを心配してくれたのは、レンのお母さんで、あたしは温かく迎え入れてくれた

毎日の食事は、一緒にって言ってくれて…その言葉にあたしは甘えてる

レンにも食事のときに会えるしって思えたから

でもレンは高校生になると同時にバイトを始めたみたいで、なかなか一緒に食事をするっていうのも減ってしまった

きっとあたしを避けているんだね

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