天然なあたしは悪MANに恋をする
「んふふ、何もしてないわけないでしょー?」

おばさんの顔がにまーっと崩れると、レンのわき腹に肘を入れた

「何もしてねえよ! しようとしたら来たんだろうがっ」

「ええ? 何よぉ、昨日の夜からずっと一緒にいたくせに。それでも男なの?」

「男だよっ! こんなごつい身体をしてて、女なわけねえだろが」

「お兄ちゃんも、俗に言う『草食系』ってヤツ?」

おばさんが軽蔑した眼差しで、レンを見てきた

「どっちだっていいだろ…てか、帰れよ」

「何よぉ。朝食は?」

「後で食うよ」

レンがおばさんの背中を押すと、廊下に出て行った

「後って、学校はどうするのよ?」

「はあ? 今日は休みだよ」

「またあ、そうやってお母さんを騙そうしても無駄よ? ミズちゃんと一緒に居たいからってサボらないの。お兄ちゃんは別に留年しようが、退学になろうが、関係ないけど…ミズちゃんは違うのよ。女の子なんだから…」

「息子の心配はねえのかよ」

「無いわよ。そんな面倒くさい」

「め…めんど……、あー、こっちだって母親と話すのが面倒くせえーよ。さっさと帰れよ。朝食は、俺がこっちに持ってくるから、一つに纏めておけよ」

レンは、おばさんを家から追い出すと、玄関のドアに鍵をかけていた

がちゃがちゃと音がすると、廊下を戻ってくる足音が聞こえた

「…ったく、いちいちうるせえヤツだ」

あたしはレンの恥ずかしそうな顔を見るなり、『ぷっ』っと噴き出してしまった

レンのブレザーを胸にかけたまま、肩を揺らして笑うと、ブレザーを膝の上にばさっと落ちた

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