天然なあたしは悪MANに恋をする
コツコツと窓に何かが当たる音がした

あたしはドアの前で動きを止めて、振り返ると窓を見つめた

窓に人の影が映っている

あたしはベッドに戻ると、片足をベッドに乗せて、窓を開けた

「レン!」

何年ぶりだろうか…レンから、あたしの部屋の窓を叩いてくれるなんて

小学校の頃は毎日、二人で親の目を盗んでは窓を開けて話し込んでいた

いつの間にやら互いに、窓に鍵をかけて、窓を叩くっていう行為すらしなくなっていたというのに

あたしは嬉しくて、思わず顔が緩んでしまう

「腹が減った」

「え?」

「貰うぞ」

レンは長い腕をあたしの部屋に入れると、ベッドの上に置きっぱなしになっているポッキーの箱に触れた

「あ…それは」

あたしは歪んでいるポッキーが、レンの部屋へと移動していくのを目で追った

「今夜は鍋だって…おばさんが」

「食ってる時間なんてねえよ。これからバイトなんだ」

「でも…あたしも頑張ってお手伝いするから」

「余計、食いたくねえ」

レンはガラガラっと窓を閉めると、鍵をかけてカーテンをかけた

一瞬だけ見えたレンの部屋

小学校の頃とは随分と様変わりしてた

もっとちゃんと見たかったな…レンの部屋を

あたしも窓を閉めると、ベッドから離れた

数年ぶりの、窓での会話

短い時間だったけど、すごくドキドキした
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