天然なあたしは悪MANに恋をする
片岡先生の家って、昔から赤族のたまり場らしい

レンもそうだけど、続々と集まる赤族のメンバーが、まるで自分の家のように歩き回っている

料理もツナギを着ている人たちがどんどんと作ってくれる

あたしが手伝おうと席を立つだけで、周りにいる赤族の人たちが、『何か足りないものがありますか?』とすぐ聞いてくる

レンはツナギを着ている人たちに、尽くされるのが当たり前って顔で別に疑問に思っていない

あたしと、あとから来たナデシコ先輩の二人だけが、場の空気に馴染めずにおろおろしていた

「あの…今朝、車にいた子よね?」

ナデシコ先輩が隣に座ると言葉をかけてきてくれる

あたしは「はい」と頷くと、オレンジジュースで喉を潤した

「良かったぁ。無事だったんだねえ。変な奴らに連れて行かれたから、不安だったんだあ」

ナデシコ先輩がほっと肩を撫でおろした

あたしは首を振った

「ナデシコ先輩こそ」

あたしたちは見つめ合ってから、くすくすと笑い合った

「あたしは崎先生に助けてもらって」

「あたしも幼馴染に…」

あたしの視線は、崎先生の隣に座って楽しそうに笑っているレンの顔を見た

「怖かったね」

ナデシコ先輩が、あたしの手を握ってくれた

「はい…怖かったですね」

騒いでる部屋で、楽しい雰囲気がこもっているのに…あたしとナデシコ先輩の目には涙がたまった

あたしの目からぽろっと涙がこぼれた

「す…すみませんっ」

あたしはズズッと鼻をすすりながら、部屋を飛び出した

「あ、待って。あたしも…」

ナデシコ先輩もあたしを追うように、部屋を出てきた


< 94 / 129 >

この作品をシェア

pagetop