天然なあたしは悪MANに恋をする
「ナデシコっ!」

崎先生が、廊下でうずくまるナデシコ先輩を抱きしめあげた

大切なお人形を抱きしめるかのように、大事にナデシコ先輩の背中をさすった

「大丈夫か? 帰るか?」

「ううん、平気」

崎先生の胸の中で、ナデシコ先輩が首を横に振った

そっか…二人は恋人同士なんだ

だから、先生が助けに来たんだ

あたしは泣きながら、階段を下りていく

一階に足をつけると、2段目の階段に腰を下ろす

身体が震える

ふとした瞬間に、恐怖心が顔を出す

手を縛られ、足を掴まれる感触が蘇り、男たちの気持ち悪い笑みが耳の中で再現される

怖くて、震えが止まらない

まだ手に残っている痣をあたしはぎゅっと掴むと、鼻水をずるっと啜りあげた

「ミズ」

背後からの低い声にあたしは、身体がびくっと飛び跳ねた

振り返ると、レンが心配した顔をして立っている

「レン…ごめっ」

「無理するな。泣きたいなら、泣けばいい。俺がいる」

「ん…ありがと」

「それとも居ないほうがいいと言うなら…」

「ううん。レンに居てもらいたい」

「そうか」

レンがあたしの横に腰を下ろすと、あたしの肩をぐっと抱き寄せた

「どうしてだろうね。忘れたいのに、思い出しちゃう」

あたしは泣きながら、言葉にする

レンの指に力が入った

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