天然なあたしは悪MANに恋をする
「ねえ、レン。バイトは平気なの?」

「あ?」

帰り道、あたしはレンと手を繋いで歩いた

レンの温かい手が、心地よい

「バイトだってば」

「あ、ああ。顔がこんなんだからな。また頬に傷ができたし、しばらくは出入り禁止だろ」

レンが今朝できた頬の傷を指でなぞった

割れた窓の破片で頬の皮膚が破れた

「ねえ、レンのバイトってなに?」

「何度、聞いても答えねえよ」

「だってツナギは暴走族の制服みたいなものでしょ? ってことは、工事現場でのバイトではないってことだよね?」

「まあな」

「じゃあ、本当のバイトは? 顔に傷ができたら、表に出してもらえないって…もしかしてホストとか?」

「はあ? この俺が女に奉仕するバイトをするかっての。おぞましい」

お…おぞましいって、ちょっとそれは、言いすぎなのでは?

レンらしいけど、でもじゃあ、なんのバイトをしているの?

「モデル…とか?」

「有り得ねえ」

レンにあっさりと否定された

「んー、じゃ何のバイト?」

「言わねえ」

「聞きたい、知りたい!」

「ゼッテー、言わねえよ」

レンが白い歯を見せて笑った

「ズルい」

「ズルくねえよ」

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