君に溺死
黒い影の正体は女の子だった。
僕よりびしょ濡れになっていた彼女。そりゃそうだ。傘も差さずにこの大雨の中、一体何時から彼女はこうしていたのだろうか。
膝を折り曲げて縮こまっていた彼女に、僕も同じ様に膝を折って視線を合わせてみた。
「…泣いてるの?」
彼女の瞳から零れていたのは雨なんかじゃ、ない。次から次へと溢れるのは、きっと。…涙だ。
僕は何故だか胸がぎゅっ、と苦しくなって。気付いた時には自らの指でその涙を拭っていた。
こんな気持ちは初めてで。ドクンドクン、と騒ぐ心臓が酷く苦しかった。