君に溺死

「芽衣は二度とオマエに会いに来ねぇよ。」



そう言って背を向けた藤咲に苛付きは爆発して。頭の中が全部ぶっ飛んだ瞬間、僕の足は地を蹴っていた。藤咲の後頭部を掴み上げて顔面を殴る。雨の中倒れ込んだ藤咲の胸倉を掴んで更に一発。僕の右手は止まらない。



「ー…はァッ、」



荒い息を吐いて。無抵抗に殴られ続けた藤咲を見下ろす。

あァ、このまま。オマエなんか死んでしまえばいいのに。

は、と渇いた笑みを零して。僕はその場を後にした。あの日の様にびしょ濡れになった身体。重たくなった衣服に舌打ちをして、髪を振り乱す。



「…それでも、めーちゃんに会いに行くよ。」



もう、待たない。

あの日と同じ雨なのに。ちっとも嬉しくなんかないよ。とても、とても冷たい。

あの日、泣いていためーちゃんの顔を思い出して。今の僕も同じ顔をしているんだろう、と思った。
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