君に溺死
相合傘をした傘は、びしょ濡れの僕達には無意味なモノだったけれど。繋いだ手から感じる温もりで、不思議と寒くなんかなかった。
「まずはお風呂に入ろうね。」
独りで暮らすには広すぎるマンションの一室は、僕が中学生の頃から住んでいる。大きめのバスタオルで彼女を包みこむと、急いでお風呂へと案内した。
繋いだ手は解くしかなくて。温もりが消えた途端、体が氷の様に冷たく感じた。
「…なんなの、コレ。」
彼女が使っているであろうシャワーの音を聞きながら、ソファに傾れ込んで。さっきから苦しくて仕方がない胸元をギュッ、と握り締めた。
愛なんて知らない僕は。これが「恋」なんだと。知らなかったんだ。