君に溺死
「…ありがとう、ございました。」
静かな室内に、彼女のか細くて頼りなさ気な声が響いた。慌てて振り返った僕の瞳に映るのは、彼女の申し訳なさそうな顔。
僕はまた、酷く胸が苦しくなって。「僕もお風呂使うから少しだけ待ってて?」と。情けない顔をして笑った。
「…本当になんなの、」
僕の溜息にも似た呟きは、シャワーの音でかき消された。
「…お待たせー。」
すっかり温まった体に少しだけ冷静になれた僕は、少しだけ明るい声で彼女に声をかけた。彼女も少しだけ微笑んでくれて。僕の頬に熱が集まる。
ねぇ、誰か教えて。この気持ちは何なのか、誰か教えて。