君に溺死
夕やけにちかった日
めーちゃんが僕に笑ってくれるなら、僕は何でもするよ。
「…ねぇ、番号とアドレス教えて?」
雨はすっかり止んでいて。空は綺麗な赤で染まっていた。僕はめーちゃんと手を繋いでマンションを出ると、少しだけ腰を曲げてそう告げた。
めーちゃんの口から、さっきの返事は貰えなかったけど。それでもイイんだ。…ただ、独りで泣かないで欲しい。僕がその涙を拭えるなら、それだけで良かった。
「…ダメ?」
初恋、なんて。この年でするモノじゃない。酷く臆病になって。でも、我慢出来なくて。
「私、まだ好き…です、」
「うん?」
めーちゃんは良い子。こんな初対面の男にも、真剣な気持ちをくれる。…だからそんなに苦しそうな顔をしなくてイイんだよ?
「だから、ハルカさんの優しさには甘える事は出来ません。」
その言葉は酷く、僕の心を傷付けるモノだったけど。君が呼ぶ、僕の名前は温かいね。