君に溺死

夕やけにちかった日


めーちゃんが僕に笑ってくれるなら、僕は何でもするよ。



「…ねぇ、番号とアドレス教えて?」



雨はすっかり止んでいて。空は綺麗な赤で染まっていた。僕はめーちゃんと手を繋いでマンションを出ると、少しだけ腰を曲げてそう告げた。

めーちゃんの口から、さっきの返事は貰えなかったけど。それでもイイんだ。…ただ、独りで泣かないで欲しい。僕がその涙を拭えるなら、それだけで良かった。



「…ダメ?」



初恋、なんて。この年でするモノじゃない。酷く臆病になって。でも、我慢出来なくて。



「私、まだ好き…です、」

「うん?」



めーちゃんは良い子。こんな初対面の男にも、真剣な気持ちをくれる。…だからそんなに苦しそうな顔をしなくてイイんだよ?



「だから、ハルカさんの優しさには甘える事は出来ません。」



その言葉は酷く、僕の心を傷付けるモノだったけど。君が呼ぶ、僕の名前は温かいね。
< 8 / 37 >

この作品をシェア

pagetop