『密室殺人』
「このおさかなのキーホルダーもパパから貰ったんだよね」
優しいパパを自慢するように弥生が言った。
「……名古屋のお土産です。仕事柄、日本中飛び回ってますので」
男はそう言い、洋子に頭を下げた。
振り返り、隣の家族は帰ってゆく。
「あの!」
洋子は思わず、男に向かって声をかけた。
「……あなた、もしかして、半年前……」
男はゆっくりと振り返った。
「言葉を発する時は『覚悟』がいる……そうは思いませんか?」
「覚悟……?」
「言ったはずです。『妻を、家族を守るためには何でもする』と」
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