『密室殺人』
男の視線が刺さる。
「……林 洋子さん、と言いましたね?」
男は鷹揚のない声で続けた。
「覚悟もなくそれ以上言葉を発するおつもりなら……いっぺん、……」
シンデミルカ?
「弥生ちゃん!!」
男の言葉を遮るようにして、慌てて洋子は叫んでいた。
聞いてはいけない予感がした。
自分の部屋の前で弥生はこちらを振り返る。
向けられた弥生のあどけない顔に安堵した。
「……幸せに、なってね!」
弥生が眩しい笑顔を見せ、応えてくれた。
「……」
男は静かに頭を下げると、自分の家族の元へと歩き出す。
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