『密室殺人』
 
まさか


そんなこと、あるはずがない。


洋子の不安が、半年前の夜の出来事をひとつひとつ繋いでゆく。


そういえば、弥生は「パパ」とも言っていなかったか?


佐野 太郎を呼ぶ時はいつも「お父さん」ではなかったか?


そんなはずはない。



そんなはずないのだ。


これは妄想なのよ、妄想なんだわ……。


恐ろしい考えを振り払うように、洋子は自分の頭を振った。


隣の部屋へ入っていく、幸せそうな家族の姿。


そうだ、そんなこと、あるはずがない。


弥生と母親を先に部屋に入れ、男もその後に続く。



< 39 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop