『密室殺人』
まさか
そんなこと、あるはずがない。
洋子の不安が、半年前の夜の出来事をひとつひとつ繋いでゆく。
そういえば、弥生は「パパ」とも言っていなかったか?
佐野 太郎を呼ぶ時はいつも「お父さん」ではなかったか?
そんなはずはない。
そんなはずないのだ。
これは妄想なのよ、妄想なんだわ……。
恐ろしい考えを振り払うように、洋子は自分の頭を振った。
隣の部屋へ入っていく、幸せそうな家族の姿。
そうだ、そんなこと、あるはずがない。
弥生と母親を先に部屋に入れ、男もその後に続く。
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