約束
プロローグ
 赤の世界が無限に伸び、どこまでも続いているような気がした。


その赤に抗うように放物線状に白く伸びている光があった。

膝を抱き、その目の前の情景をただ見つめていた。

「おばあちゃん」

 一人の女性の姿を脳裏に思い描く。


そして、彼女が触れてくれたときのあたたかい感触、言葉の響き、ちょっとした癖やしぐさを映像を見るように思い出していた。

 私は目にたまった涙をぬぐった。


祖母を想い、その涙を家族に見せないために一人でいられる場所をさがしていたときに見つけたのが、この草木が生い茂る場所だったのだ。


 その悲しい景色が、切り取られたように視野が遮られる。そして、灰色の影がひざに届いていた。


 どこから現れたのか、いつの間にか髪の毛を腰の辺りまで伸ばした目元のぱっちりとした少女が立っていた。

彼女が体をうずめているシフォンワンピースが風になびく。

「どうかしたの?」

 キーの高い透明感のある声だったが、その声は迷子みたいに所在がはっきりとせず、弱々しいものだった。

まるで彼女自身が先ほどまで泣いていたのではないかと思うほど。


 それでも彼女は目を細め、かがんでいる私に目線を合わせてくれた。彼女の黒く澄んだ目に私の姿が映し出される。
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