約束
 彼は縁なしの眼鏡をかけていて、驚いたように目を見開いて私を見ていた。だが、見たことのない人だった。


 だが、目が合ってしまった手前、顔をそむけることもできずに、頭を下げて、その場を足早に立ち去ることにした。


 図書館を出たところにある階段まで来ると息を吐く。

 さっきの人がどうして驚いた表情を浮べていたのか気になったが、私にはそれ以上に引っかかることがある。

 本を借りている現場を木原君もに見つかってしまったことだ。本の話を振られたら、どうしよう。

 本を読んで仲良くなりたいとは思っていたが、こそっと読んで内容を理解できたら話をもちかけようと思っていたのに。
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