約束
 その話を聞いて、せめて晴実に相談したら良かったと後悔するが、すでに遅い。

「頑張って読んでみるよ。国語の勉強をしている気分だけど」

 晴実は笑顔で頷いてくれた。本を読むことに集中することにした。だが、そんな決意もすぐにそがれてしまうこととなる。その本は想像以上に難しい話だった。

 私は本とにらめっこをしていたが、読んでもページが進まないのだ。晴実からはざっと読めばというアドバイスもされたが、そんなことをできるわけもなく一字一句も落とさないようにしっかりと読んでいた。

 全く読書が進まず、三ページも読まないうちに、次の授業の開始を告げるチャイムが鳴った。




 ホームルームが終わると、晴実は首を傾げてたずねてきた。

「どう? 本は進んだ?」

 私は首を横に振る。休み時間によんだが、全く話が進まなかった。

「どんな話か教えてあげようか? あらすじがおおまかに分かったほうが読みやすいとは思うんだよね。その話は中学のときによんだことがあるの」

 甘い誘惑の言葉を晴実は投げかけてくる。だが、木原君に見つかってしまったことや、自分で読むと決めたため、返事はすぐに決まる。

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