約束
「それでこそ由佳だよ」

「褒めているの?」

「もちろん、由佳のそういう真っ直ぐなところが可愛いと思うもの」

 可愛いと言われ、どきっとしていた。でも、実際見た目も、性格も、晴実のほうがぐんと可愛いのに。

「じゃあね」

 鞄に手を伸ばした彼女を呼び止めた。

「一緒に帰らない? 木原君も晴実とは話しやすそうだったし」

「気にしないで。私、一人で帰るのも結構好きなんだ」

 彼女は一人っ子で兄弟はいない。人に頼るよりは、自分で何でもやってしまう、私とは対極にある人だ。勉強もそこそこできるし、運動神経がずば抜けている。高校に入った頃は運動部からの誘いもあったようだった。
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