約束
 そこで体が自由を取り戻し、振り返ることができた。だが、後ろを見た瞬間、私の動きは固まっていた。

 そこには今朝何度も姿を見た彼が立っていた。

 野木君は木原君に声をかけると、そのままでていく。

「帰ろうか」

 身動き一つ取れない私に笑顔で言葉を返す。彼の様子は今朝と変わらない。

 そうだよね。当たり前だから。

 そう言い聞かせても、胸が痛んでいた。

 彼にとっては私が誰から告白されようがあまり関係なかったんだと気付いてしまったのだ。

 学校は授業が終わるとあっと言う間に人気がなくなる。私たちが校舎を出た頃にはほとんど人の気配がなくなっていた。強い風が辺りを駆け抜けていく。その風が私たちの言葉を奪っていってしまった。

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