約束
 彼女の言葉にうなずく。

 そのとき、鐘の音がゆっくりと響きわたる。今のは昼休みの終わりを告げるチャイムだ。

 今から授業が始まる。私は昼休みになると用事があるとだけ晴実に告げ、すぐに教室を飛び出していったので、ごはんも食べていない。そして、すぐに百合にあった。彼女と私のそんな背景が異なっているとは思わなかった。

「北田さんはごはんは?」
「いいのよ。どうせ今日は学校が終わるのが早いし」

 彼女と話をしていると近所のお姉さんと話をしているような感じだった。

 彼女がしっかりしているのか、私が子供なのかと言われればその双方だろう。

「少し遅刻してから戻ろうか。言い訳は一人より二人のほうがしやすいから」

 そういったのは私のためだったんだろう。彼女はこういう人だったのだということを初めて知った。

 私は彼女から借りたハンカチを手に、百合をじっと見ていた。

「北田さんは素敵な人ですね」

「そんなことないわよ。よく生意気と言われるし」

「そんなことないですよ。綺麗でしっかりしていてすごいなって思うから」
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