約束
 私と晴実が最後まで残っていたようで、教室内が私一人だけになる。

 重い心を動かし、木原君にメールを送ることにした。百合から優しい言葉をかけられても、まだ彼の前で笑う自信がなかったのだ。そんな自分のことがまた嫌になる。

 携帯を取り出し、本文を打ち、あとは送るだけとなったとき、教室の扉が開く音が聞こえた。体を震わせ、扉を確認すると、そこには長身の少女の姿があった。

 彼女は扉を閉めると、私のところまでやってくる。


「やっぱりまだ落ち込んでいるんだ」

 顔が赤くなるのが分かり、頷いていた。

「あなた達って本当に似ているよね。木原君も考えごとをしていたのか今日一日、ずっとボーっとしていたわよ。いつも授業は真面目に受けるのにね。ノートもとってなかったみたい」

「何で木原君が?」

 百合は困ったような笑みを浮かべていた。

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