約束
 私はそこまで考えてやっと状況を理解した。

 本当に私はダメだと思う。

 私が頷くと、彼女はホッとしたような笑顔を浮かべる。

「少し時間はかかると思うけど、待っていてね」

 私がどんなに酷いことをしていたのか、彼女の言葉で身を持って知った。

 彼女はお礼を言うと、教室を出て行く。私は昼休みに続いて、彼女はそういう人なのだと思い知らされる。

 それからは再び扉が開くのを待っていた。謝らないといけない。私は彼に対して。木原君以上に。

 彼女よりも頭一つ分程高い人が、扉を開ける。彼は私と目が合うと、すぐに顔を逸らしてしまった。

 なにかいわないといけない。私もそう考えるが、言葉が出てこない。

 彼は唇を強く結ぶと、教室の扉を閉め、私のところまで来た。昨日のあの目で私を見つめていた。鋭さのある、それでいて澄んでいて人を魅了する瞳だ。艶やかな黒髪をかきあげると、苦い表情を浮かべる。
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