約束
「帰りましょうか」


 春先にしては強さを感じる太陽の光が辺りを照りつける。

 でも、そんなことを感じていたのはつかの間のことだった。私の意識は別のものに向かっていたからだ。それは人の眼差し。その理由はすぐに分かった。私が木原くんと一緒にいるからだ。私もあの子以外の子と彼が一緒にいたら、その理由を知りたくて、じっと見てしまうから。

 木原くんはいつもこんな視線を浴びているんだろうか。

 私が窓辺から見ていた視線もこう感じさせていたのだろうか。そう考えると彼を見ていたことが申し訳なくなってしまった。

 彼は気にするそぶりもなく、淡々と歩いていた。
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