約束
「あいつは門のところにいるはずだから」
「一緒に帰るんですか?」
「昨日も今日も一緒に登校したんだろう。何をそんなにびびってんだよ」

「だって、木原君と話すのは緊張するから」
「だから、君にとって雅哉は『特別』なんだろう?」

 私はすっと心の中に入ってきた彼の言葉にうなずく。

 特別という言葉がすごくしっくりきていた。

「君も、いきなりは無理だろうけど、少しずつ変わっていけばいいんじゃない。まずは引きつらずに話すことだからそれ以前の問題だろうけど」

「誰から聞いたんですか?」

「雅哉と野村。雅哉の場合は違う言い方だけど、多分そういう意味だったと思う」

 百合も晴実と野木君が親しいと言っていたから、何らかのきっかけでそういう話をしていたんだろう。だから驚くべきことではなかった。

「がんばります」

 私は不安に想いながら、彼の言葉にうなずいていた。
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