約束
 教室に入ると晴実が机の上で何かメモを取っていた。彼女は私と目が合うと手招きしていた。素直に彼女のところまで行く。早めに登校したからか、今教室内にいるのは私と晴実だけだ。

 彼女は英語の勉強をしていたようだ。ペンをとめ、私の瞳をじっと見る。

「昨日、野木君から由佳に告白して失恋したって聞いたの。断ったのは私のことがあったから?」

 ゼロじゃない。でも、晴実のことがなくても断っていたと思う。

「木原君のことがあるからだと思う。私は木原君のことが好きなの」

 口にして、顔が赤くなるのが分かった。昨日認めたばかりの気持ちだ。

「そっか。私、野木君が由佳のことを好きなのは知っていたんだ。だから別にそのことでは驚かないし、由佳が野木君のことを好きになったら、つきあってもかまわないと思っていたの。だから隠しておきたかったのにね」
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