約束
私は心の重荷が一つとれ、彼の言葉に笑顔で答える。彼はよろしくと言い残すと電話を切った。
「初めての電話か」
私は自分の顔がにやついているのに気付き、携帯を机の上に置くと、まずは木原君の部屋に行く。
階段をあがり、彼の部屋の前までくると、深呼吸をする。彼の部屋に入るのは一週間ぶりだった。あまりあのときと変化はないはずだと言い聞かせながらも心臓が高鳴っていた。
ドアノブに触れているのに、胸の鼓動が回すのを邪魔をする。私は目を瞑り、力を込めて、ドアノブを開けた。
木原君の部屋の壁一面にある窓ガラスが半開きになっていた。私はそのことに内心喜びながら、彼の部屋に足を忍ばせた。
窓を閉めるとホッとする。
幸い雨はほとんど入り込んでなかった。
久しぶりの木原君の部屋を少しだけ見渡し、部屋を出て行こうと思った。だが、私の視線は机の上にテキストの下に重ねるようにしておいてあったものに釘付けになる。それは住宅案内の雑誌だった。
彼がここにい続けることはまだ決まっていない。だから、新しい家を探していても仕方ないとは思う。そう言い聞かせても、彼が出て行くかもしれないということにショックを受けていた。
前に買ったものかもと自分に甘い答えを与えると、机の傍まで行く。そして、その発売日を確認していた。その雑誌が発売されたのは二日前だった。彼とすれ違いはあったが、最近は少しずつ話せるようになってきた。それでも彼は出て行くことを考えていたのだろうか。