約束
そのとき、階下から緩やかな音楽が聞こえてきた。木原君から電話がかかってきたのかもしれないと部屋を飛び出すと、急いでリビングに戻る。七色のライトを順にともらせる携帯を手に取った。
だが、そこに記されていた名前を見て、落胆を隠せないでいた。記されてたのは姉の名前だったのだ。
電話を取ると、いつもと変わらない姉の声が聞こえてきた。
「一人でも大丈夫だよね。今日、美紀の家に泊まる」
美紀さんは姉の友人。バイト先と家が近いらしく普段から泊まりに行くことも多かったので、そういうことになったんだろう。
私は分かったというと電話を切った。だが、姉が何かを伝え忘れたのかと思うようなタイミングで再び音楽が鳴る。
そこに表示されてた名前を見て、思わず息を呑む。さっき脳裏に描いた人の名前だった。深呼吸をすると通話ボタンを押す。
「窓だけど、どうなっていた?」
「あいていたから閉めたよ」
本当に言いたいのはそんなことではなかった。
出て行こうとしているの?
何度頭の中でそのフレーズを描き出しても口にすることはできなかった。そんな権利がないことは分かっているからだ。
「何かあった?」
心の中を見透かされたようでドキッとしたが、首を横に振る。心の中に開いた隙間に目をそらし、返事をしていた。
「何もないよ。ゆっくりしてきてね」
だが、そこに記されていた名前を見て、落胆を隠せないでいた。記されてたのは姉の名前だったのだ。
電話を取ると、いつもと変わらない姉の声が聞こえてきた。
「一人でも大丈夫だよね。今日、美紀の家に泊まる」
美紀さんは姉の友人。バイト先と家が近いらしく普段から泊まりに行くことも多かったので、そういうことになったんだろう。
私は分かったというと電話を切った。だが、姉が何かを伝え忘れたのかと思うようなタイミングで再び音楽が鳴る。
そこに表示されてた名前を見て、思わず息を呑む。さっき脳裏に描いた人の名前だった。深呼吸をすると通話ボタンを押す。
「窓だけど、どうなっていた?」
「あいていたから閉めたよ」
本当に言いたいのはそんなことではなかった。
出て行こうとしているの?
何度頭の中でそのフレーズを描き出しても口にすることはできなかった。そんな権利がないことは分かっているからだ。
「何かあった?」
心の中を見透かされたようでドキッとしたが、首を横に振る。心の中に開いた隙間に目をそらし、返事をしていた。
「何もないよ。ゆっくりしてきてね」