約束
木原君のお母さんは帰ってくるとケーキを出してくれた。偶然にも私の好きなチョコレートケーキだった。
夜ごはんは木原君のお母さんが作ってくれた。グラタンや、から揚げなどその種類も豊富だった。木原君はいつもより品数が多いのだと教えてくれた。私が来たことで張り切っているみたいだ、と。
夜ご飯を食べ終わった後、木原君のお父さんが帰ってきて、簡単な言葉を交わした。見た目も似ているけど、それ以上にいい意味でまじめそうな雰囲気が木原君に似ている気がした。
「今日、田崎さんの家に泊まっていい? 一人では危ないし」
「いいって、木原君の家なんだからそんなこと聞かなくて泊まっていいよ。でも、いいの?」
両親と過ごせる時間はそんなに多くないのに。
「別にいいよ。念のため。いないよりは役に立つと思うから。勝手なことをしてごめん」
木原君は少し困ったような顔をしていた。
彼はその旨を両親に伝えていた。
「今日は田崎さんの家に泊まって、明日戻ってくるから」
「分かったけど、雅哉は大丈夫なの?」
木原君のお母さんが心配そうに彼を見ていた。
「大丈夫」
彼は笑顔を浮かべていたが、彼女の不安は拭い去れていないようだ。
家に帰る頃にはすっかり雨が上がっていただが、足場が悪いからと木原君のお母さんが家まで車で送ってくれることになった。
私が深々と頭を下げると、彼女は気にしなくていいと言ってくれた。
家の中は誰もおらず、しんと静まり返っていた。
「シャワー借りるね」