約束
 途中、私は空腹に耐えかねて、飴玉を二粒食べた。

 だが、時計の針が十一時を指した時、私はさすがにリビングを出て行く事にした。寝坊といっても遅すぎるような気がするし、今日も家に行くといっていたから、さすがに起こすべきだと思ったのだ。

 私は階段をあがり、木原君の部屋に行く。部屋の前まで行くと、何度も深呼吸をする。一言目はおはようと言おう。

 二言目にはごはんの話でもしたらいいのかな。あとは家にかえる話とか。彼とする会話のことを少しだけ考え、拳を作り、気持ちを固めると扉をノックする。

 だが、返事はなかった。疲れがたまって、寝ているのかもしれない。木原君の寝顔はどんな顔なのだろうという考えが頭を過ぎる。

 心配だからと言い訳をし、逸る気持ちを抑えて扉を開けた。

 最初に目に入ったのは机。でも、机のところに彼の姿はない。視線をずらしていくと入り口の右サイドにあるベッドが目に入る。

 そこに布団をかぶり眠っている木原君を見つける。木原君の顔は布団から出ていたがその顔を見て嫌な予感がした。

 彼の頬が赤く染まっている気がしたからだ。私は足音を忍ばせ、眠っている彼を起こさないように近寄る。

 彼の額に手を当てた。彼の額は私の想像どおり、熱を帯びていた。

 そのときは顔が赤くなっている彼のことが心配で、あまり緊張らしい緊張はしていなかったと思う。ただ、今何をすべきなのか。

そうしたことを必死で考えていた。こんなときに限って誰もいない。
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