約束
 それに。

 私は机の上を見る。こんな状態になっても勉強をするほど、何か目標があるのだろうか。ここの大学に行きたいと強く思うほどの。

 私がその目標を妨害することはできない。それでも今日だけは無理をしないでいてほしかった。

「今日は絶対にゆっくり休んでね」
「分かった」

 私はそう約束すると、彼の部屋を後にした。

 私の周りの子は高校一年の後半辺りから志望校を大まかに固めている。それは晴実もだ。きっと、木原君もそうだったのだろう。私には行きたい学科とか、やりたいことは何もなかった。

 ただ、漠然と大学には行く気で、姉の通っている大学の理学部辺りに行こうかなと思っていた。そう決めても学力も届かないという半端な状態だ。

「将来の夢、か」
 私は自分の言葉に力なく頷いていた。
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