約束
 私はベランダに出ると、てすりに手を置き、天を仰ぐ。空には星がそれぞれの光を瞬かせてきらめいている。

その自然の作り出した景色に目を奪われていると、窓の開く音が聞こえる。振り返ると木原君が立っていた。

 彼はスリッパを履き、ベランダに出てくる。

素足でも歩けるように掃除などはされているが、夏以外の時期では足がひんやりと冷たくなってしまうので、いつもヒールのないサンダルを履くようにしていた。

それは彼も同じで、いつの間にか彼の部屋の前にはサンダルが置いてあった。

「休憩?」

 私の問いかけに木原君はうなずく。

「君の姿が見えたから」

 その言葉が少しくすぐったい。私がいるから外に出てきてくれたわけではないと思うけど、それでも嬉しい。

「あれが北極星だっけ?」

 木原君が指差した先には暗闇の中に決して明るいわけではないが、ほんのりと白色に輝く星があった。一年中変わらずに瞬き続ける星。

「うん。そうだよ」
「星って見たら、どれがどの星座か分かる?」
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