約束
茶色の屋根にそれより何段階も薄いベージュに近い外壁。家は二階建てで目を上げればそんな外壁に似合わない水色のカーテンが見え隠れする。
家の前には名称を具体的にあげればきりがないほど、多彩な花が艶やかに咲いていた。見慣れた家を確認し、彼を見る。
彼もここが私の家と気付いたのか、小さくうなずいていた。
門を押すと、金属音が私の心を冷やすように響く。だが、そんな音はすぐに空に飲み込まれてしまう。
玄関の前まで来ると、もう一度木原君を見た。そのときの彼は口元を締め、顔をこわばらせていた。
そんな彼の態度をどこか身近に感じていた。深呼吸をすると、金色のステンレス製のノブを引く。すぐに見慣れた玄関先の景色が飛び込んでくる。
だが、いつもは違い、無造作に放置されている靴が示し合わされたように玄関のへり沿いに並んでいた。
「どうぞ」
彼は頭を下げると靴を脱ぐ。私も靴を脱ぎ、玄関に置かれているスリッパを彼に出した。だが、そこで動きが止まる。彼をどこに通せばいいのか分からなかったのだ。客間でいいのだろうか。それともリビングだろうか。
彼をどこに案内しようか迷っていると、リビングの扉が開き、髪の毛にかるいウェーブのかかった黒髪の女性が出てきた。彼女は私と木原くんを交互に見ると大きな目を細めていた。
「あなたが木原くんね。はじめまして。田崎梨絵といいます」
木原君は姉につられたように深々と頭を下げていた。戸惑ったような表情から二人に面識があるようには思えなかった。
姉が私を見て、あごをしゃくる。
「由佳の部屋の隣の部屋に案内してくれる? もう直ぐお父さんたちも帰ってくると思うから」
「いいけど、どうして?」
家の前には名称を具体的にあげればきりがないほど、多彩な花が艶やかに咲いていた。見慣れた家を確認し、彼を見る。
彼もここが私の家と気付いたのか、小さくうなずいていた。
門を押すと、金属音が私の心を冷やすように響く。だが、そんな音はすぐに空に飲み込まれてしまう。
玄関の前まで来ると、もう一度木原君を見た。そのときの彼は口元を締め、顔をこわばらせていた。
そんな彼の態度をどこか身近に感じていた。深呼吸をすると、金色のステンレス製のノブを引く。すぐに見慣れた玄関先の景色が飛び込んでくる。
だが、いつもは違い、無造作に放置されている靴が示し合わされたように玄関のへり沿いに並んでいた。
「どうぞ」
彼は頭を下げると靴を脱ぐ。私も靴を脱ぎ、玄関に置かれているスリッパを彼に出した。だが、そこで動きが止まる。彼をどこに通せばいいのか分からなかったのだ。客間でいいのだろうか。それともリビングだろうか。
彼をどこに案内しようか迷っていると、リビングの扉が開き、髪の毛にかるいウェーブのかかった黒髪の女性が出てきた。彼女は私と木原くんを交互に見ると大きな目を細めていた。
「あなたが木原くんね。はじめまして。田崎梨絵といいます」
木原君は姉につられたように深々と頭を下げていた。戸惑ったような表情から二人に面識があるようには思えなかった。
姉が私を見て、あごをしゃくる。
「由佳の部屋の隣の部屋に案内してくれる? もう直ぐお父さんたちも帰ってくると思うから」
「いいけど、どうして?」