約束
 訪れた人を案内するなら、この家の六畳ほどの客間に使っている和室だと決まっている。い草の香りがほのかに漂う和室に、お客を案内するのがいつのまにか慣習のようになっていたからだ。

親しい人であればリビングの可能性もあったが、姉の言葉はその二つを打ち消していた。

 私の隣の部屋は姉の言ったように空き部屋になっている。物置も別にあることから、物置として活用されることもなく、親戚が遊びに来たときなどに寝泊りに使われる程度だった。

「え? 来月からそこにこの子が住むからに決まっているでしょう?」

 さらっと聞こえてきた言葉に、耳を疑った。

 一緒に住む?

 頭の中で何度もその言葉が繰り返されていた。


「私もさっきお母さんに今朝、聞いて驚いたんだ。お母さんは言うの忘れていたんだってさ」

 すらすらと物事を語る姉とは逆に、私は話が理解できないでいた。

 木原君を見た。だが、彼は特別驚いたような様子もなく、苦笑いを浮かべていた。

 知っていたのかなと思うほど。


< 18 / 546 >

この作品をシェア

pagetop