約束
 私達はそこから少し離れた交差点まで足早に行くことにした。

 交差点まで来ると、私達は足を止める。さすがに学校から五分も離れたところまで来ると、先生たちも追ってはこない。

 通りすがりの人が木原君とその知り合いらしき男性をちらちらと見ていた。彼の日本人と思えないスタイルは顔と同様に目立つ。

「由佳ちゃん、雅哉に話があるんだけど、借りていい?」

「え、あの」

 私はどうしていいのか分からずに木原君を見る。

 木原君はため息をつくと彼を見た。

「一度家に帰ってからならいいよ」

「私、一人で帰れるから大丈夫だよ」

 木原君は私を気にしているのだと気付く。

「荷物が重いし、荷物を置きたいだけだよ」

 木原君はそう言うと、笑顔を浮かべていた。

「いいよ。どこか別の場所で待ち合わせをしようか」

 二人は待ち合わせ場所を相談していたようだが、なかなか決まらないようだった。


どこかにいくわけでもなく、本当に話をするだけらしい。それも人気のない静かな場所を希望しているとのことだ。相談する二人に私はある提案をした。

「私の家で話をしたらどうですか? 木原君の部屋ならだれにも聞かれる心配はないと思いますよ」

「でも、迷惑をかけてしまうと思う」

「そんなことないよ。だから、そうしたらいいよ」

 その男の人は私達を見ると、笑顔を浮かべていた。
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