約束
「君って、百合と親しいの?」

「はい。友達です」

「そっか。百合のことをよろしく頼むよ」

 彼はそう言うと、部屋を出て行った。

 木原君が帰ってきたのはそれから一時間くらい後だった。まだ家には誰にも帰ってきていない。

 彼はわざわざ私の部屋まで来ると、深々と頭を下げていた。

「今日はごめん。一馬が勝手におしかけて」

「気にしないで。でも、顔は似ているのに、全然性格は似ていないね」

「よく言われる。従兄弟なのに兄弟に間違えられていたから」


 木原君は苦笑いを浮かべていた。

「あの人ってまだ百合のこと好きなの?」

「多分ね。昔からずっとらしい。でも、好きになった要因が要因だから、北田はあまり快く思っていないだろうな」
< 188 / 546 >

この作品をシェア

pagetop