約束
 顔に出しすぎてしまうのは注意しないといけない。

「そんなことないよ。たまには晴実たちと帰りたいし」

 その言葉に嘘はない。彼と会えなかった事を嘆かなくても、帰ったらいつでも会える。こういう環境に感謝してしまいたくなる。

 晴実は私の言葉に笑顔を浮かべる。

「一緒に住んでいるっていいよね」

「そんなに分かりやすいかな」

「分かりやすい」

 そう淡々と答えたのは百合だった。

 私は昨日の事をまだ百合には話していない。

「昨日、ね」

 私が一馬さんの話をしようとしたときに、私の携帯が電話の着信を伝える。

発信者は木原君だった。電話を取ったときに聞こえてきたのは、それより少し低い声だった。

「由佳ちゃん、久しぶりって言っても一日ぶりかな」
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