約束
「一応幼馴染でもあるから、仲が悪いわけではないの」

「確かに変わった人だよね。木原君と顔は似ているけど、性格は全然違う」

「あの人に会ったことあるの?」

 私がうなずくと、悪戯っぽく、困ったような笑顔を浮かべていた。そんなふうに百合が笑うのを初めて見た。大人びた笑みとは違う、年相応の笑みだ。

「二人で何の話をしているの?」

 不思議そうに聞いてくる晴実に、彼のことを話そうとしたときだった。私たちの前に影が届く。

「久しぶり」

 そう言って笑顔を浮かべたのは矢島さんだった。

 だが、百合は突然真顔になり、彼を見据えている。

「誰、この人?」

 百合は彼を見て、ため息を吐く。

「木原君の従兄弟。久しぶりね。先輩。何か私に用事があるの?」

「顔を見たかったんだ」

「用事は終わりました?」

「そうだね。残念だけど。今度、どこか遊びにいこう」
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