約束
「由佳ちゃんも人のこと言えないと思うけど」

 一馬さんの視線が木原君に向けられるのが分かった。木原君は不思議そうに首をかしげているが、そんなあからさまな態度を取られると気づいてしまう可能性もある。

「止めてくださいよ」

「冗談だって。そんなことしないから」

 力いっぱい否定したためか、一馬さんが逆に驚いたように否定する。

「困らせたお詫びに何かおごるよ」

 突然の誘いに驚きを隠せない。お互いに好きな人がいるといえ、デートなんだろうか。

 ただ、彼から百合のことをどう思っているのか聞けるチャンスだと思っていたのだ。そう感じたのは今日の百合の様子がいつもと違っていたためだ。

 いくら百合を好きな人でも全く知らない人なら嫌だったと思う。木原君のいとこで百合の幼馴染だからという安心感もあった。

「パフェがいい」

 彼は笑顔でうなずく。

 木原君は心配そうに私達のやり取りを眺めていた。

「無理に付き合わなくてもいいよ」

「大丈夫だよ」
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