約束
 一馬さんは苦笑いを浮かべている。

「あいつなりに君のことを心配しているのだろうね」

「そう、ですか?」

「だって普段のあいつならあんなこと言わないからね。行きたいなら行けって感じだと思うよ」

 それが本当のことか分からないけれど、本当だったらとても嬉しい。そういえば百合もそんなことをいっていた気がする。

基本的に彼は自分のこと以外興味がないのだ、と。

「木原君とすごく仲がいいんですね」

 気持ちを素直に口に出せるには、お互いにそれなりの信頼関係があるからだと思ったからだ。それは百合もそうだった。

そうでないとただの不満のぶつけ合いになってしまう。

「仲はいいと思うよ」

 彼はあっさりと認め、明るい笑みを浮かべる。


「あいつの両親に会った?」

「はい。素敵な両親でしたね」

「そっか。それなら良かった」
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