約束
 思い返せば姉と一馬さんもそうだ。人と人との関係なんて案外そんなものなのかもしれない。

 彼らのうち二人は私と同じくらいの年だった。ということはあの子のことを知っている可能性はあるのだろうか。

 家を出てから、彼の子供時代のことを聞いてみた。

 彼は笑顔で答えてくれた。

「昔は一馬と近所だったんだ。今は一馬もこっちに来たから、伯母さんが一人で住んでいる」

 木原君の言葉から、一馬さんにはお父さんがいないらしいということを暗に気付く。

「あの辺りって変わった? お祖母ちゃんが生きていた間は何度か言ったけどそれっきりで」

 彼は寂しそうに微笑んでいた。それから互いに何も話さなかった。まるで、お互いに話をすることを避けているのではないかと思ってしまうほど、後味の悪い沈黙だった。

 私はなんとなく、天を仰いだ。青く澄んだ空がどこまでも広がっている。あのときの悲しみを帯びた空の色とは違う色、だ。

あのときの彼は今はどうしているんだろう。笑ってくれているんだろうか。

 夢の影響か、木原君と一緒にいるのにあれ以来十年以上会うことのなかった彼のことばかり考えていた。
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