約束
 私はテレビ台の隣においていたカッターナイフを彼に渡す。それでガムテープを切っていく。そして、黄土色のダンボールをゆっくりと開けた。

 そこには綺麗な包装紙と袋に包まれたお菓子がいくつかと、洋服、アルバムがその端に入れてあった。

「アルバム?」

「何でこんなものを送って来るんだか。置いてくるよ」

 彼は短くため息を吐くと、真っ先にそれを取り出す。それを手にリビングを出て行こうとした。自分の洋服よりもそれを人に見られたくなかったんだろう。

「見たい」

 私は頭で考えるより先に、言葉を発していた。

「人に見せるようなものじゃないよ」

 私と彼の間に妙な沈黙が流れていた。

「ごめんなさい」

 私は感情に任せて気持ちを伝えた事を反省して、素直な気持ちを詫びた。

「見てもいいよ」

 木原君に余計に気を遣わせてしまったのか、彼は遠慮がちにそう言葉を伝える。

「無理に見なくてもいいよ。恥ずかしいよね。子供の時の写真なんて」

「そういうわけじゃなくて」

 妙に今日の彼は歯切れが悪い。

「いいよ。見ようか」

 彼はアルバムを床の上に置く。

 みなくてもいいといってもみたいのは紛れもなく私の本心で、彼のアルバムを覗き込み、アルバムの表紙に手を触れる。

 最初の一枚をめくると、赤ん坊の写真が目に飛び込んできた。

「可愛いね」

 目がちょっと半開きのようになっていて、寝ぼけているのがなんともいえずに可愛い。
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